第5章 特級
私をこうさせてる張本人が何を言っているのよ。
大きく呼吸をくり返しながらなんとか落ち着きを取り戻す。
「好きじゃないの」
「やっぱり?」
「やっぱりってなに」
「そっかぁ。俺、夏油のこと好きなのかぁ」
「……口にして確かめなくていいから」
ポヤポヤとした顔でニヤニヤと笑みを浮かべる虎杖。
傍からいれば気持ち悪いの一言に尽きる。
が、どこか楽しそうだ。
「虎杖」
「なに?」
「私はあんたの恋、応援するわよ」
「え?」
「夏油みたいな奴にはアンタみたいなタイプの方がお似合いなのよ。伏黒みたいなタイプよりも」
「まじで?」
「まじまじ大マジ」
それに虎杖だったら夏油を大切にしてくれそうだし。
せっかくできた女友達だもん。
幸せになって欲しいじゃない。
彼女の事を考えたら尚更。
だから、夏油を傷付ける奴は私が許さない。
「帰りにでも夏油に何かプレゼントでもしたら?」
「何かってなに?」
「そこは自分で考えなさいよ」
古い記憶は新しい記憶に塗り替えられる。
今日の楽しい事を忘れたくなかったら、忘れて欲しくなかったら、何かあげればいい。
そう、助言した。
そしたら虎杖は、マスコットキャラのネズミが両手を上げてウィンクをしている虎杖に少しだけ似ているぬいぐるみのストラップを帰りに購入していた。
それを見て、心の中で虎杖の拍手を送った。