第5章 特級
地面に転がる小銭を拾い財布の中にしまい虎杖の手の中へと戻す。
「えっと……何の話?」
「ごまかし方下手くそか。ガキでももう少しまともにごまかすわよ」
「なんで知って……まさか伏黒から聞いたのか?」
「聞いてないわよ。女の勘よ、勘」
「お待たせしました!!はちみつ味のポップコーンです!!」
キャストの人の声に驚き慌てた虎杖は財布からお金を出した。
「お客様の夢が叶うように、おまじないをかけておきました!」
「おまじない……?」
「甘い香りに誘われる、そんなおまじないです!!」
「まじで⁉」
「はい!!では、夢の国をごゆっくり!!」
大きく手を振ってくれるキャストさんに虎杖も大きく手を振った。
甘い香りってそれってただのハチミツの匂いでしょうが。
夢の国をごゆっくりって、覚めたら意味もクソもないじゃない。
恋も夢も冷める(覚める)って?
どこもうまくないのよ!!!!
「すげえなここで働いてる人達!!俺、すげえ感動したんだけど!!」
「はいはい、そうね」
あんたもここで働けば?って言おうとしたけどやめた。
想像したら違和感の「い」の字もなかったから。
「で、夏油のこと好きなの?」
「……好き、なのかもしれない」
「かもってなによ」
私達はあの二人が待つ場所へと戻る。
その間に恋バナをしているんだけど、虎杖の歯切れが悪すぎる。
「まだ自信持てないんだよ……」
「好きに自信もクソもないわよ。好きって思ったら好き一択。それ以外の感情はないの」
「えぇー……」
「ずぶ濡れマウンテンに乗った時あんた夏油と手、繋いでたじゃない。どう思ったのよ」
「めっっっっっちゃドキドキした。嬉しかった」
「オマエそれでよく自信がないって言えるわね!!!」
「く、釘崎落ち付け。な?な?」