第5章 特級
高専に戻り、私はその足で教室に向かう。
本当は休みたかったけど、今は無性に彼らに会いたいと思ってしまった。
こんな風に誰かに会いたいと思うことなど一生ないと思っていたのに、不思議だ。
教室の扉を開ければ、3人は私の帰りを待っていたようで口々に言葉を発する。
聖徳太子ではない私は彼らの言葉を全部聞き取ることができなくて、困ってしまった。
でも、聞き取れなかったけど「お疲れ様」というその言葉だけはすとんと胸に落ちて、涙をこらえるために眉間に皺を寄せた。
「……明日、どこ行くか決まったの」
「とりあえず新宿と渋谷と池袋と……」
「映画行こうって話したじゃんかよ‼」
「ばっかね、映画なんていつでも行けるわ」
「さっきからこんなんだぞ」
「ふーん」
「逆に夏油は行きたいところないのか?」
虎杖にそう言われて私は首を捻る。
行きたい場所……。
そう言われるとないな。
あーでも、最近任務ばっかりだったからゆっくりできる場所がいいなぁ。
「夢の国に行きたい、かも」
どうした私。
頭ばぐったか。
ゆっくりできる場所=夢の国ってアホにもほどがあるだろ。
伏黒の顔を見てみろ。
すごい残念そうな顔してる。
「夢の国⁉行きたい行きたい行きたい!!!」
「あんたたまにはいい事言うじゃない!!最高!!」
「東京観光じゃないけどいいの?」
「馬鹿だな夏油は!!東京観光より夢の国だろ!!」
「え、あ……うん」
テンションが爆上がりの虎杖と釘崎に、私と伏黒は黙ってその様子を見ていた。
「……伏黒は行きたい場所ないの」
「動物園」
「なんだそれ、かわいいかよ」
ダメもとで聞いてみたら動物園って。
顔とのギャップがすごすぎるんだが。
結局動物園は却下され、明日4人で夢の国に行くこととなった。
私の休日さらば。