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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第5章 特級






伊地知さんに現場まで送ってもらい、私は任務に励む。
この瞬間だけは何もかも忘れることができた。
嫌な事も苦しい事も。
無心で、呪いを祓って。
呪いを祓って。
その繰り返し。

終わってしまえばまた、虚無感に襲われるとわかってはいるけど。
一瞬でも忘れることができるのならそれでよかった。

「お疲れ様です。今日の任務はこれで以上です」
「高専に戻ってください。流石に疲れました」
「わかりました。高専に着いたら起こしますので、寝ていていいですよ」
「はい。……いや、いいです」
「はい?」

いつもなら寝ることを優先する私に、伊地知さんは不思議そうにバックミラー越しに私を見た。
伊地知さんと仕事以外で話したことはほとんどない。
だから少しだけ、話してみたいと思った。

「伊地知さんは、私の事どう思いますか」
「どう、とは……」
「夏油傑の妹って知ってますよね。どう思いますか」
「……正直に言いますと、初めは警戒していました。短い時間ではありますが、私も夏油さんの後輩でしたから。尊敬もしていました」

伊地知さんは真面目な人だから、聞いてもいないことを話してくれた。
裏切られて悲しかったことや、高専時代に励ましてもらったことが嬉しかったこととか、五条悟とのコンビは最強ですごく輝いて見えたこと。
全部全部、教えてくれた。

「夏油さんの妹ということは紛れもない事実ですし、貴方もそれを誇りに思っているのでしょう」
「はい……」
「だから、こういう質問をするのは辞めた方がいいですよ」
「え……?」
「"夏油傑の妹である自分をどう思うか"という質問です」
「…………」
「その質問は貴方や夏油さんの価値を下げる行為だと私は思っています。ご自身の事を見てもらいたいと思っているのなら尚更です。自分で自分の事を縛っているように見えます」
「……伊地知さんってすごいいい人ですね」
「そうですか?何もできないしがない"補助監督"にすぎませよ」




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