第3章 受胎
「おいしいって?」
「……よくそんな恥ずかしいセリフ言えるよな」
「にだけだよ」
「ほざけ」
啄むようなキスを額や瞼に落とす男の体を押しのける。
ゆっくりと体を起こして、濡れる口元を拭った。
熱に犯される身体は、自分でもわかるほどの目の前の男を望んでいる。
だけど私の理性がそれを許さない。
ベッドから立ち上がり乱れた制服を正す。
「悪いけど。やっぱりお前と性交はできない」
「なんで?」
「わかんなくなる」
「どういうこと」
部屋の扉に手を掛け、帰ろうとする背中に五条悟が抱き着く。
首元に巻かれる腕に手を添えた。
「殺したい、気持ちに嘘偽りはない」
「うん」
「でも、それすらを超えてしまう感情が生まれてるのもわかってる。これが、自分の感情そのものなのか、"この子"が生み出すそれなのかわからない。わからないから絆されたくない」
自分の本当の自分を見失いたくなかった。
これ以上してしまえば、私は私がわからなくなる。
だと言うのに、男は私の顎を掴むと後ろを向かせた。
「んっ……」
塞がれる唇。
離されるときぺろりと舐められた。
ゆっくりと目を開けると、青い瞳と視線がぶつかる。
「わからないままでいいよ。今は。追々、気づいてくれれば」
「は?何言って……ふ、ん……」
またキスをされた。
角度を変えて長く深く。
五条悟に掴まる事しかできず、ただそれを受け止めた。
「ん、ぅ……ふぅ、ん……」