第3章 受胎
「妊娠してるよ、夏油」
世界が止まったような気がした。
意識は宇宙の彼方よりももっと遠くの方へ飛んで行った気がする。
あの後、吐けるものは全部吐いた私を五条悟はお姫様抱っこで医務室へと連れてきた。
体調不良を訴え診察を終えた私に、家入硝子は淡々とそう告げた。
妊、娠……。
にんしん……。
言葉の意味は分かる。
分かるけど、わからない。
なんで、妊娠してんだ、誰の子供だよ。
気持ち悪い。
「妊娠と言っても、お前が宿してるのは呪霊だよ」
「え……?」
今は家入硝子と二人きりだ。
五条悟をこの場に残さなかったのは、検査結果を私だけに伝える為だったのだろう。
家入硝子は一枚の写真を渡してきた。
それはいわゆるエコー写真というもの。
白黒のエコー写真には、はっきりと不気味な黒い塊が映り込んでいた。
一気に視界が霞んだ。
「これが……胎児?」
「そう。人間とは到底思えないだろう」
家入硝子の言う通り、人間の赤ちゃんとは思えないおぞましい形をした影があって、口に手を当ててしまった。
こんなものが私の胎内にいるなんて思うと、散々吐いたと言うのに吐き気がこみあげてくる。
「呪霊を孕むケースはあるにはある。産んでしまえば大体は祓う事ができるし」
「………産む?私が、こいつを……?」
「そうだ。そうでなければお前事祓う事になる」
絶望としか言いようがなかった。