第31章 契約破棄
『家族で最後に話したあの日、第一志望校の入試だったんだってな。担任の先生から電話をもらった。』
「うん。勝手なことしてごめんなさい。」
『いや、いい。お前が自分の道を見つけられたのなら…それで。』
罪悪感と後悔。
父の表情から、それは読み取れた。
『お前だけじゃなく、環にも。一生心に残る傷を負わせてしまった。
後悔しても謝罪しても…気が済まないよ。』
「そう思ってくれてるだけで良かった。たぶん、お兄ちゃんも。」
母の、兄に対する虐待を黙認してしまった父。
でも、本来持つ温かい心を取り戻せたんだよね?
お父さんがちゃんと、過去の過ちを悔いていること。
私は……誇らしく思うよ。
「お兄ちゃんを想ってくれるなら、今度お店に来て?場所、送っとくね。」
『……環はそれを望んでないかもしれない。きっと俺のこと恨んでるだろ。』
「お母さんのことは、もしかしたら…。でもお父さんなら、絶対に大丈夫。」
“すごいだろ?お父さんはな、甲子園っていうすごい大会にも出たことがあるんだよ!”
私ね、小さい頃のこと……ちゃんと憶えてるよ?
お父さんが本当は、とっても優しいってこと。
「今のお父さんとお兄ちゃんなら、絶対に大丈夫!」
そんなお父さんが好きだから、お兄ちゃんは野球をやってた。
私だって中学で、野球部のマネージャーっていう選択肢を取った。
『……ありがとうな、夢。』
近いうち、本当に来てくれればいいな。