第17章 独占欲
「ーーっっ」
蜂楽に声を掛けようと開いた自分の口を、咄嗟に両手で塞いだ。
絶対に、見てはいけないものを見た。
見たくなんか……なかった。
繊細な感情の部分に石でもぶつけられて派手に割れてしまったような、そんな感覚。
ガシャンと壊されたその硝子の破片が
パラパラと崩れる音がする───。
その場から、走って立ち去った。
「夢ちゃん?」
走り出した直後、背中の方で声が小さく聞こえた。
どうして?
私のこと大好きって……言ってたじゃん。
“……もっと俺のコト、信じてよ。”
“信じてるよ、廻。大好き。”
これじゃ蝉川の時と何も変わらないよ。
やっと誰かを信じられるようになったのに……
廻のこと、信じてるのに……!!
私の中の、醜い“独占欲”が暴走する。
この黒い塊が……
脳内から手足の指先まで、体中にはびこり始める。
悲しい気持ち、怒り狂いそうな程の嫉妬。
青い気持ちと、赤い気持ちが混ざり合うけど
でもそれは、綺麗な紫色になんかなれない。
涙を流したいのか、流したくないのか
それすら解らない。
なのに私の意思とは関係なく、溢れる涙。
誰にも見られたくない、感情的な顔を隠したくて
生徒会室に、勢いよく逃げ込んだ。
「!? 蜜浦先輩……!?」
ちょうど生徒会室で休憩をしていた蝶野くんは、
うるさく開いた引き戸に驚いて私を見た。