第17章 独占欲
返ってきた答案用紙を広げた蜂楽が、指折り数える。
「赤点はぁ、数学、古文、化学、日本史…と…」
「と!?」
「……こんだけっす♪」
「……補習だね。お、英語と現文はセーフ?」
「いつもより全然好成績♪夢センセーが、手取り足取り腰取り♡お勉強教えてくれたからかにゃ?」
「はいはい。すごいね。よく頑張りました。」
頭を撫でると、ニコニコして本当に嬉しそう。
答案用紙の字のヘタクソ加減が、彼らしくて可愛い。
「これから毎日会議だから、補習終わるの待ってる。」
間近に迫る、文化祭。
期末テストが終わった今、すぐにやってくる。
テストが終わって少し落ち着いたこのタイミングで、私は両親にメッセージを出した。
『帰り道、誰かに尾けられているようです。』
用件だけの、事務的な文章。
“怖い”と思ってるとか“不安”に感じているとか、
私の気持ちは書けない。
これを送るのすら、躊躇った。
どっちが見ても良いように…
捉え方に誤解が生じないように…。
だから念のため、父と母のふたり宛に。
私が在宅してる時には、めっきり帰って来なくなった両親。
学校に行ってる時には時々帰って、溜まった洗濯物を置いていく。
病院のコインランドリーも併用しないと、やりくり出来ないはずだ。
私は本当に見放されてしまったのだろうかと、
さすがに娘として不安になる。
期末テスト前に提出した、進路希望調査を受けての面談だって控えてる。
進路のこと……
住み込みアシスタントのこと……
大切なことだから、本当はスマホじゃなくて直接相談したいのに。