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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第7章 ※本当の私




「すまん、すまん。遅くなったなー。」


忘れるはずのない明るい声が響く。

「沙良、今日はわざわざありがとな。」

最後に見た変わらない笑顔の梅君が、そこにいた。

『ううん、久しぶり…』

緊張して小声になってしまった。

瞬間…
梅くんと晴竜さん、雨竜さんが持ってきたお皿の上の食べ物を見て体が強張る。

「やったー!待ってました。
梅の焼きトマト、さいっこうに美味しいの!沙良もほら、取りなさいな。」

割り箸やら紙皿やらをポイポイ渡してくれる椿さん。

『…っ……』

どうしよう…

「沙良君?どうした?」

状況に敏感な水木さんが、カチャリと眼鏡を上げ、声をかけてくれた。

『いえ…別に……』

バジルに濡れた赤い食べ物が視界に入っただけで、冷や汗が出てきそうだ。

「はっはーん…沙良ちゃん…」

椿さんに気づかれてしまったようだ。

「さてはアンタ…トマトだめね?」

目を細め、意地悪く聞いてくる椿さんに反抗してみる。

『いえ、そんなっ…トマト……美味しそう…』

笑顔で言ってみるも、顔が引きつる。


「そーお?じゃあ食べてみなさいよ。ほら。」

目の前のお皿にポン、と1つトマトが乗せられた。

『…………』

食べたら済む話だ。

しかもこれは梅君が作ってくれた料理。
ありがたくいただかなくては…

『いただきます…』


箸で掴み、口に入れると…

『…ぉ…美味しい…』

バジルとこの酸っぱさがよく合っている。
これは…

『バルサミコ酢…?』

「おっ、正解。流石だな。」

『トマト…苦手だったけど、これなら食べられそう…』

「ははっ、それなら良かった。
元々、百瀬もあんまトマト得意じゃなくて、そのために調べたレシピなんだよな。」

梅くんがトマトを1つ取って口に入れ、うまい!と言った。


「ふっ…
沙良もトマトだめなのか。初めて知ったわ。」

『っ…でも、食べられたからね。』

「ははっ、良かった。」


よーし、早速本題だ、と言うと、皆席の周りに集まった。

『沙良、蓬莱の話…知らない奴もいるから、悪いが初めから話してもらえるか?」

私は頷き、条君との出会いから今に至るまでをゆっくりと話した。
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