【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第6章 ※恋愛のカタチ
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「全く…何でこう警戒心がないかなぁ…?」
店の手伝いを片付け、飲み物を持って上に上がってくると、机に伏しながらくうくうと寝息を立てて眠る沙良ちゃん。
確かに降りてから30分以上経っているけれど、人の家で眠るなんてね…
学校のテスト勉強をしていたのか、腕の下には細かな字で呪文のように書かれた教科書が隠れている。
「ふふっ…難しい事やってるねぇ…」
俺にはさっぱりわからないや。
する事がないから、沙良ちゃんの寝顔を見つめながら麦茶を飲む。
長い睫毛は少しカールしているけれど、人工的なものではない。綺麗な白い肌。薄くファンデーションは塗っているみたいだ。
半開きの小さな口元からは静かな寝息が聞こえる。
優しい気持ちで見つめていたつもりだった。
沙良ちゃんの口から、その名前を聞くまでは…
『ん……梅…君……』
気づくと上がっていた筈の口角は下がり、唇に力が入っていくのがわかった。
俺は
その名前を吐いた沙良ちゃんの唇を
自分の口でそっと塞いだ。
『………んっ…』
息が吸えなくなって不快感を感じたのか、ピクリと震えて沙良ちゃんの目が開かれると、わざと視線を合わせた。
『ん……』
数秒して、おかしいと感じたのか沙良ちゃんは目を見開き、急いで体を離した。
『…っ…十亀さんっ…何で…』
口元を隠すように手の甲を唇に当てている。
「沙良ちゃんてさ…」
わざとニッコリと笑った。
「彼氏いるの?」
『彼氏……いないです…十亀さん…何で今…』
前半部分はどうでもいい…というように、不安気な顔で俺を見つめる。
やめて…その顔。
「どのくらいいないの?」
『……一度も…いたことないです…』
俺は目を見開いた。
「処女じゃないって言ってたよね…
意外だなぁ。沙良ちゃん、誰とでもするの?」
『ちがっ…誰とでもなんか…しないです…』
「じゃあ好きだったんだね、ソイツのこと…」
『それは……』
何、違うの?
わからないな…沙良ちゃんの事。
「沙良ちゃんごめんね、今さ…
沙良ちゃん風鈴の奴の名前、口にしてたよ。」
『…っ……』