【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第6章 ※恋愛のカタチ
沙良ちゃんの目には骨董や木彫りの置物がすぐに目に入ったようだった。
「そう…じいちゃんの部屋を俺が使うようになってさ、じいちゃんは下の部屋に寝るようになったんだぁ。
ひどい孫だよね。」
ふふっ、と笑う沙良ちゃん。
『けど…おじいさんは嬉しいと思います。
孫と過ごせる方ばかりじゃないですし、お店のお手伝いまでしてくれる孫なんて、まるで跡継ぎみたいで、それっておじいさんにとったら最高なんじゃないですか…?』
「…………」
『っ…ごめんなさい、私…』
「ううん…違うよ。そんな風に言ってもらえるの、初めてだなぁ、って思っただけ。」
俺は小5の時、じいちゃんに引き取られた。
聞いたことはないけど、じいちゃんは俺の事を内心どう思っているのか…正直気になってはいた。
「沙良ちゃん…普通に話してる中で謝るの禁止ね。
俺は傷ついてないし、嫌な思いもしてないからさ…」
『すみません…癖でつい…』
沙良ちゃんは恵まれた容姿をしているのにも関わらず、自己肯定感がかなり低い上に、相手に気を遣いすぎる。
何かあった事だけは明確だ。
けれど俺にはまだ心を許しきっていないのがわかる。
だから…
「さぁ…座って。
女の子に勉強教えてもらうのとか、初めてだなぁ。
よろしくねぇ。」
ローテーブルの前に座るよう促した。
部屋に来た女の子となんて、する事は決まっていた。
勉強なんてする筈がない。
本当は勉強なんて全く興味ないけれど、風鈴の連中に勉強を教えている沙良ちゃんはキラキラとして、楽しそうだ。
得意なことを一緒にできたら、もっと沙良ちゃんは俺に心を許すはず…そう思った。
プルルル………
『…っ……』
「ごめん、内線だ…」
じいちゃんからのヘルプ。
急いで電話に出て話を聞く。
「沙良ちゃん、ちょっとごめんね…下降りてくる。良かったら自分の事してて。」
お茶も出さすにごめんね、と言うと気にしないで下さい、と手を振る沙良ちゃん。
カンカンと音を鳴らして下に降りながら考える。
少し熱を持った体。
「ふふっ…ちゃんと勉強なんてできるのかな…」
自信ないねぇ…
俺はそう自嘲しながら、店の中に入って行った。