【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第6章 ※恋愛のカタチ
十亀さんの顔を見て、ハッとした。
『冗談ですっ…ごめんなさい。』
「いや…ははっ、わかってたよ、勿論…
そうじゃなくて…嬉しかったんだ、沙良ちゃんが俺に冗談を言ってくれるなんて。」
ちょっと心を許してくれたのかなって、と微笑む十亀さん。
『なぜ蓬莱さんがこれをくれたかは…また機会があった時にお話しさせてもらってもいいですか…?』
「……うん、わかった。
沙良ちゃんが話してもいいって思ってくれる時まで、気長に待ってるねぇ。」
『ありがとうございます…』
何か飲みますか?と聞くと、ラムネで、と答える十亀さんのために冷蔵庫に向かい、瓶を差し出した。
『私、ラムネのシュワシュワが小さい頃から苦手で…
炭酸を飲める方って凄いなって思っていました。』
「ふふっ…お子様だねぇ。何度も飲んでたら慣れるかもよ。」
パチンと鳴らしてラムネを開けて一口飲むと、ほら飲んで…と目の前に差し出す十亀さん。
細かな泡が上っていく瓶に躊躇する。
『あ…えっと……』
断るのは失礼だ。気分を害するかもしれない…
でもこれは炭酸…苦手な飲み物だ。
いつもそう。
何が正解かわからない…
「ふっ、沙良ちゃん…嫌ならさ、嫌って言っていんだよ。苦手な物は断ったらいいし、嬉しい時は、嬉しいって言ってよ。」
『………はい。』
「…沙良ちゃんさ、人付き合い苦手でしょ?」
『…苦手です。』
「俺もそうだったけど、沙良ちゃんほどじゃないからさ。何かあったの…?」
『…また…お話します。』
「…うん、ごめんね。
誕生日にそんな顔させて。けど…」
十亀さんは私の手の上に大きな手を重ねた。
『…っ……』
「何があってもさ…俺は沙良ちゃんの味方だよ。」
優しく微笑む十亀さん。
『ありがとうございます…』
嫌な感じはしなかった。
十亀さんになら、甘えても大丈夫なのかな…
そんな風に思った。
ーーーーーーーーーーーーー
それからお父さんと3人でオードブルを食べ、誕生日の歌を歌ってもらってケーキを食べて…
不思議な感じだったけれど、完全に気を許した父は終始十亀さんに絡み、十亀さんも上手に受け流してくれて…
その様子が滑稽で何度も笑ってしまった。