【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第6章 ※恋愛のカタチ
「誕生日に魚!?いや、魚が悪いわけじゃなくて…
誕生日くらい…お前に座っていてほしいんだよ…」
『ありがとね、お父さん…ケーキだけで十分だよ。』
「遠藤さん…良かったら俺、一緒にご馳走になりますよ。」
『…ぇ……………えぇっ!?』
「あぁ、いやぁ…娘の誕生日をお祝いしたい遠藤さんの気持ちもわかるし、俺がいれば食べきれないなんて事ないかな、って…」
俺たくさん食べるからさ、と笑う十亀さん。
「それに…俺のじいちゃん結構酒飲みでさ、先代の遠藤保さんに結構お世話になったみたいなんだ。だから恩返しっていうと変だけど…」
「え…十亀君のお爺様って…」
「金物屋の十亀です。高架の先、ずっと行ったとこにある…」
「金物屋の!正美さんちのお孫さんか!いやぁ、そういえば目元が似てるなぁ、お爺さんに。うちの酒瓶の棚受けとか、小さい頃、しょっ中直してもらってたんだ。」
これだよ、と棚受けの金具を見せるお父さん。
「いやぁ…繋がってるんだなぁ、縁を感じるよ。十亀君、良ければご飯食べていってくれないか?」
すっかり気を許したのかお父さんの方から十亀さんを食事に誘い出した。
『お父さんっ…十亀さんだって予定があるし、悪いよ。急に誘ったら…』
「なーんにもないよ。大丈夫。」
笑顔で応える十亀さん。
「ほら、十亀君もこう言ってくれてる。よかったら正美さんも…なんて、急すぎるか。あはは…ごめんね、俺すぐ調子に乗っちゃうんだ。」
「いえいえ、遠藤さんは本当、いいお父さんですよね。
羨ましいです…」
十亀さんの顔が少しだけ寂しそうだった。
そう言えば、十亀さんのご両親の話を聞いたことがない…
「そんな。すぐ調子乗るって沙良に怒られるよ。
じゃあ行ってくる。ケーキ取りに行って、オードブル買って…30分くらいかな?できるだけ早く帰るから、頼むね。」
そう言うと、お父さんは自転車で出かけていった。
『ごめんなさい、十亀さん。何か…
もう子供じゃないんだからお祝いとかいいんですが、父は小さい頃から誕生日とクリスマス、お正月はやらないと気がすまなくて…』
「いいよぉ、俺も沙良ちゃんの誕生日、お祝いできて嬉しいし、それに…」
十亀さんは、急に真顔になって言った。