【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第6章 ※恋愛のカタチ
無意識に、桃のジュースを梶君に持ってこようとしてしまった。
梶君はいつも、見回りをしている時にお店の前を通るとよく買っていたから…
それじゃあまた、と3人はポトスに戻って行った。
「沙良?大丈夫か?どうしたんだ。」
『大丈夫…ちょっと…』
無意識に梶君の事を考えた自分に驚いた。
梶君とは全然話せなかったけれど、必要か確認したプリントは頷いて貰ってくれて、その上集中して取り組んでくれた。
口数は少ないけれど、頑張り屋で真面目な梶君。
全然変わってないな…と思った。
「こんにちはぁ…沙良ちゃん、帰ってたんだね。」
『十亀さんっ…すみません…ちょっと事情があって…』
十亀さんに、帰宅した理由を簡単に説明した。
「えっ…沙良ちゃん、今日誕生日なんだ。
おめでとう。いい1年になるといいね。」
十亀さんはニッコリと微笑んで、手に持っていたビニール袋を手渡してくれた。
『これは……?』
「サボテンのパンだよ。この時間だからタイムセールしてて、たくさん買っちゃった。」
『え…これ……十亀さんが食べる分ですよね?
そんな…申し訳ないです。』
「いいよぉ、俺からの誕生日プレゼント。食べて。」
『受け取れませんっ…十亀さ………』
"素直に任せなさいよ"
『…っ……あ…ありがとう…ございます…』
「……?うん。良かった、貰ってくれて。」
人の好意に慣れていない。
甘えていいのか悪いのかさえもよくわからない…
わからないけれど…
甘えてもいいのかもしれない…
そう思った。
「じゃあ俺…行くね。」
帰ろうとした十亀さんに、お父さんが声をかけた。
「十亀君ごめんっ…」
「…?」
「今日、沙良の誕生日だから一応さ…ケーキ頼んだんだ。沙良がポトスに行っている間に取りに行こうと思ってたんだけど、帰ってきちゃったから…
少しだけ、沙良と店番しててくれないかな?すぐ戻るから。」
手を合わせてお願いポーズをとるお父さん。
「全然いいですよ…
ゆっくり行ってきて下さい。」
「ありがとう。じゃあちょっと…行ってくる。
あ…夕飯のオードブルも買ってこようかな。」
『っ…食べきれないし勿体ないよ。
普通でいいよ。魚か何か、私焼くし…』