【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
『うん…全然覚えてなかったんだけど…
話していて思い出して…』
そう言うと沙良ちゃんは俯き、喋らなくなった。
蘇枋の事を考えているのが癪に障り、わざと意地悪を言った。
「…それで?懐かしくなって近付かせたんだ…
警戒心なさすぎだよ、沙良ちゃん…わざと?」
『っ…わざとじゃ…』
「そうかな?わざと、わざとじゃなく見せてたりして…
アイツにキスされたの?髪を触らせて…唇がどこに触れた?」
沙良ちゃんの唇に触れ、顔を近付けた。
『…っ……』
沙良ちゃんは俺の口を両手で押さえ、そっと離れた。
『条君…わかってもらえなくて…いいよ。
いくら私が言っても…信じてもらえないと思うし…』
右手を胸の前で握り、俺を見つめた。
その拳は小刻みに震え、表情は悲しそうに歪んでいる。
「沙良ちゃん…」
『帰るね…』
バス停は商店街の前から出ていて、ここから遠藤酒店も見える。明かりがついていて、勿論店もまだ開店していた。
俺は沙良ちゃんが早足で店の中に入っていくのを黙って見つめていた。
怒らせた。
いや…悲しませたんだ。
俺のくだらない嫉妬のせいで…
今日は木曜日。
沙良ちゃんの送迎も、あと3日だというのに…
「ははっ…ダッサイねぇ…」
俺は地面を見つめ、自嘲しながら歩き出した。
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side 沙良
最悪だ…
条君を傷つけてしまった。
なんて態度をとってしまったのだろう…
きちんとメッセージを送って謝ろう。
スマホを取り出すと、メッセージが入っていることに気付いた。
『椿さんだ…』
そこには、明日の打ち合わせがケイセイ街で行われる事、楡君と桜君、それに…蘇枋君は場所がわかるため、3人に道案内を頼んだ事が書かれていた。
蘇枋君…
3年生と合流すると、何事もなかったかのように俺はこれで、とにこやかに去って行った。
あの後すぐに帰ったのかな…
梅君にだってメッセージを送りたい。
きちんと謝りたい。
『私…人を傷つけてばっかりだ…』
梅君と条君に謝罪のメッセージを送ると、かなり遅い時間になっており、少し勉強をして眠りについた。