【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
side 十亀
「お茶でいい…?」
自販機で買ったお茶を受け取る沙良ちゃん。
ひんやりとして気持ちいいのか、頬にあてている。
『…ありがとう。』
お茶の水滴がつき、頬が少し濡れていて…エロい。
「ふふっ…ごめん何で走っちゃったんだろう。
青春スイッチ入っちゃったのかなぁ…」
やだねぇ…と笑った。
『あの…条君…今からどこか行くの?』
「うん。ボーリングとかカラオケとか、ゲーセンとか入ってる遊び場、沙良ちゃん行ったことある?」
『ない…けどごめん…明日学校のテストなんだ。今日は帰らなきゃ…』
「そっか…じゃあほんの少しだけ。
短い時間でいくつか回ろう。1時間以内にするから…」
せっかく沙良ちゃんと一緒にいるんだから。
このまま帰りたくない…
『…わかった。じゃあ…ほんの少し…』
沙良ちゃんが断れないとわかってのお願い。
ホント…悪い奴だよね…
俺たちは町に向かうバスに乗り込み、アミューズメントパークに入って行った。
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「沙良ちゃん渋い選曲だねぇ…けど上手いや…」
『お父さんが歌ってた歌は小さい頃から聴いていたから、歌いやすくて…最近の曲も知ってはいるよ…?』
「これは?一緒に歌おうよ…」
『知ってる。条くん、いい声だね…』
「沙良ちゃん、真ん中の三角に向かって真っ直ぐ投げてごらん。」
『っ…何でだろう?曲がっちゃう…』
「投げる時手首ひねってる…」
『…こう?』
「そうそう、上手じゃない。」
「沙良ちゃん、何か欲しい人形ない?好きなキャラとか…」
『よくわからないけど…この猫がいいな…けど取れないかな…』
「何回かに分けて、って感じだな…」
『わっ…凄い、条君。
今のは3回目で取る、って決めてたの?』
「ふふっ…そうだね。ここはチームの連中とよく来るから…最近は来てなかったけど、クレーンゲームは結構得意かな。」
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店から出た時は、暗くなり始めていた。
『…楽しかったぁ。条君、ありがとう。』
にっこりと笑う沙良ちゃん。カバンには、さっき俺が取った猫の人形がついている。
「よかった…こういう所初めてだったんだね。」