【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
『……やめようと思って…
やめられないってわかったから……』
何回も、やめたい…きっと勘違いだ…そう思った。
お日様のように皆を照らし、温かくしてくれる梅君みたいな人を、自分が好きでいていいはずがない…
雨に濡れ、雪に覆われ、冷たくなったアスファルトが、太陽の光を浴びてその温かさに心地よくなって、勘違いしているだけ。
そう思ったけれど…
一度温かさを覚えたアスファルトは、また温かさを求めたくなった。
冷たいのは嫌だ…
太陽と一緒にいたい…
「ならさ…梅宮とは別に、好きな人をつくったらいいじゃない…好きな人を一人に絞る必要なんてないよ。
結婚してるわけじゃないんだからさ…」
条君は私の頭を撫でながら言った。
『そんなの…相手に…失礼じゃないの?』
「まぁ倫理的に…沙良ちゃんを好きな奴には、きちんと好きな人がいるって伝えた方がいいかもね。
けど…沙良ちゃんが好きだから、それでもいい、って言う奴はいるんじゃない?
それでそいつを好きになる可能性も0じゃないでしょ?
そしたら沙良ちゃんは辛くなくなるんじゃないかな。」
『私を好きになってくれる人…』
「現に梶は沙良ちゃんが好きでしょ。多分梅宮を好きだとわかっても、アイツは沙良ちゃんを好きだと思う。
ポトスに行ってもさぁ、沙良ちゃんをそういう目で見てる奴、結構いるよ。黄色い爆発ヘアの奴なんかもそうだし…」
私は軽くため息をついて歩き出した。
『いないよ…優しい方ばかりだからそう思うんじゃないかな。私を好きって…どこを?って思っちゃう。
柘浦君だって、皆に優しいよ?私だからじゃない…』
「はぁー…沙良ちゃんさぁ…
人を好きになる前に、まず自分を好きになろうよ。沙良ちゃんはまだ、自分の良さに全然気づいてない。そのためにはさ…」
条君は私の手を取り、走り出した。
『…っ……ぇ……条君…?』
「楽しい事しよう。やった事ない事とか、行った事ない所とか行ってさ、楽しまなきゃ。楽しいって思えたら、自分の事もきっと認められるようになると思うよ。」
握られた大きな手。
走るスピードが速くて息が上がる。
バス停に着くと、条くんが飲み物を差し出してくれた。