【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
「俺も負けないよ。」
真っ直ぐな眼差しが私を見つめる。
『蘇枋君……あの……』
蘇枋君は困ったように眉を下げ、微笑んだ。
「ふっ…ごめん、沙良ちゃんを困らせたいわけじゃないんだ。俺の事…思い出してくれて嬉しかったよ。」
そう言うと立ち上がり、手を差し出した。
「立てる…?」
差し出された手にそっと捕まると、グイっと引き寄せられた。勢いがつきすぎてよろけてしまう。
『…ぁ…っ……』
「…大丈夫?」
蘇枋君の顔が近づく。
スッと通った鼻筋。長い睫毛…大きな…瞳…
『ありがとう…大丈夫。
あの…蘇枋君…3年生の時に会った時は…眼帯…してなかったよね…
その眼帯は…お洒落で…?それとも怪我とか…』
「……見たい?」
『あ…ううんっ。何でつけてるのかなって…
っ…ごめんね…興味本位で聞いたみたいで…』
「ふふっ…嬉しいよ?
沙良ちゃんが俺に興味を持ってくれるなんて…」
そう言うと
蘇枋君は
スルスルと眼帯の紐を解き始めた。
『…っ…蘇枋君…無理しないで…
見たいわけじゃ…』
外された
眼帯の下を見て
私はその場を動けなくなった。
「…びっくりした?初めてだよ、家族以外に見せたの。怖かった…?気持ち悪かった?」
ニコニコとしながらまた眼帯をつける蘇枋君。
勢いよく首を振った。
『……いた…かった…?』
「うーん…まぁ、そうだね。
一応人を不快にさせないようにこうして隠してるんだけどね…別に見せてもいいかな、っていう思いと…見るのが嫌だっていう人もいるだろうな…って思いがあるかな。」
『…少し…わかる…あ、ごめん…
簡単にわかるとか…言って…』
そっと、私の手を掴む蘇枋君。
「沙良ちゃん、君の気持ちが一番わかるのは俺だと思うし…俺の気持ちが一番わかるのも…君だよ。」
『…………』
「ふっ…じゃあ行こうか…
念の為聞くけど、トイレは本当に行きたいの?」
首を振った。
「…わかった。俺に話を合わせてね。」
蘇枋君に手を引かれて教室を出ると、ちょうど水木さんに会った。
蘇枋君は、すでに私を職員用のトイレに案内し、ついでに校内を案内していたのだと言ってくれた。
梅君や柊さん、椿さんとも合流し、迎えに来てくれた条君と一緒に学校を後にした。