【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
「あの日、友達と一緒に帰っていた俺は、いつも通る公園で君を見つけた。けど、君の様子は少しおかしくて…
ジャングルジムの前でずっと顔を覆っていた。」
そこまで言うと、蘇枋君は私の体の強張りに気付き、そっと自分の方に引き寄せると優しく抱きしめた。
「ごめん…思い出したくないよね…」
『………』
あの日の光景を思い出し、胸が潰れそうになった。
うまく声が出ない…体が震える…
『見…てたんだ……』
「…泣いてるって気付いたから友達を先に帰らせて、君の近くまで走って行ったんだ。
そうしたら遠くから男の子が上着を持って走ってきて、大きな声で叫びながら君に上着を投げつけた。」
"バイ菌!学校来んなよ!"
"俺達に病気移すな!ゴミバイ菌!"
『…っ……』
頭がズキズキと痛む。
今の今、言われた言葉のようで胸が抉られる。
ギュッと目を瞑ると涙が次から次へと流れた。
「…服を拾って…
泣きながら着ている君の腕から覗くものを見てわかったよ…」
蘇枋君は私の左腕に優しく触れた。
「沙良ちゃん…辛かったね…」
その手が肩を抱くと、力が込められていくのがわかった。
「結局俺は君に話しかけられなかった…
笑って君にお礼を言うはずだったのに、その場に立ち尽くして…君を見送る事しかできなかった…」
『…………』
「その後、俺は師匠と出会って、強くなった。
強くなる度に…いつも…君のことを思い出したよ。
だから…ポトスで君に会った時はホントに…
夢かと思ったんだ。」
溢れる涙を優しく掬う蘇枋君。
「沙良ちゃん…君を…俺に守らせてくれないかい?」
『ま…もる?』
「俺が初めて強くなりたいって思ったのは…
君に…俺はもう大丈夫だよ、って言うためだった。
けど…5年生でもう一度思った時は、理由が変わったんだ。」
蘇枋君の手が頬に触れる。
「君を守りたかったから。
また会えるかわからなかったけど…
いつか会えたら、君に絶対に言おうって思った。」
そう言うと
蘇枋君は私の額に
そっと口付けた。
『蘇枋…君…』
「沙良ちゃん……梶さんじゃなくて、俺にしなよ。」
『…っ何で…梶君の事…』
「梶さんは…ああ見えて周りもよく見えているし、人望も厚い。口は悪いけれど心の優しい人だと思う。
けど…」