• テキストサイズ

合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB】

第4章 6つのお題から自由に選択



涼やかな秋風が頬を撫でていく。

夕暮れが小さな町を包み込む頃、明かりが一つ、また一つと灯り始めた。

黄昏時から開催される伝統の夜祭は和風ハロウィンともいわれ、この閑静な町にとって年に一度の大イベントである。

普段は人通りもまばらな商店街に、久しぶりに活気が戻ってきた。


祭りが始まる頃、ここは非現実の世界に染まる。

提灯の明かりが揺れ、狐や鬼、天狗など妖に化けた老若男女が町中の通りを賑わせている。

日頃はひっそりとしたこの町も、この日ばかりは幻想の都のようだ。

七瀬は、鬼の面を手に持ちながら祭りの準備に追われていた。

日本史の勉強に励む大学院生であり、町の和菓子店でアルバイトをしながら過ごしている。


「七瀬ちゃんの鬼の仮装、とても似合ってるわ」


和菓子店の店主であるおばさんが、温かい笑顔で声をかけてきた。


「ありがとうございます。軽く仮装して、久しぶりに祭りを覗くつもりだったんですけど、案外気合いが入ってしまって……」


七瀬は苦笑を浮かべながら、手元の面を見つめた。

口元を血で濡らす生々しい鬼の顔。

雑貨店で目にした時から、胸の奥に説明のつかない感情が湧き上がって、即買いしてしまった。

懐かしさのような、そして同時に深い憎しみのような、複雑で矛盾した感情。

夜祭の参加条件は「仮装していること」。

七瀬は迷わず鬼を選んだ。黒と白のコントラストで彩られた着物に袖を通す。



/ 165ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp