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合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB】

第4章 6つのお題から自由に選択



呪術廻戦:禪院直哉✖️怪談

禪院家には、古くから伝わる掟がある。



「夜半、奥座敷の鏡を覗くな」――。



その理由を知る者はもういない。ただ、幼子ですら鏡に近づくことを避けていた。

だが、嫁いできたばかりの七瀬は、その言葉を迷信だと笑った。



雨の降る夜。

眠れずに歩いた廊下の先、月明かりを受けてぼんやりと光る姿見が目に留まる。

何の気なしに立ち止まり、覗き込んだ瞬間、背筋が冷えた。



――鏡の奥に、直哉が立っていたのだ。



彼は遠く離れたの座敷で眠っているはずだった。

なのに、鏡の直哉は目を細め、甘やかに笑んでいる。



「……やっと俺のこと、見てくれたな。」



低く艶やかな声が耳元に響いた。

振り返っても誰もいない。それでも確かに頬を撫でる指の感触が残る。

ぞっとしたはずなのに、胸の奥が熱を帯び、心臓が早鐘を打つ。



その夜からだ。

鏡の直哉は、夜ごと現れるようになった。



白い指先で髪を梳き、肩を抱き、唇を塞ぐ。

冷たく湿った肌が触れるたび、痛みと快楽がないまぜになって溶けていく。

朝になれば痣が残り、首筋には赤黒い噛み跡が刻まれていた。



「……怖いんか?」

囁く声は甘く、吐息は熱い。

「せやけど、お前は……笑っとるやないか。」



涙が滲むほどの疼きの中で、それでも七瀬は確かに笑っていた。

恐怖よりも、直哉に触れられる幸福が勝ってしまう。



だが昼の直哉は違った。

七瀬が「昨夜、あなたに会った」と勇気を出して話すと、彼は冷え切った眼差しで見下ろした。



「アホやな。俺がそんなことするわけないやろ。」

笑うでもなく、ただ突き放すような声音。

食事の席でもろくに目を合わせず、言葉をかけても素っ気ない返事ばかり。

その態度の冷たさに、七瀬は胸を締めつけられた。

けれど夜になれば、必ず鏡の中の直哉が現れ、甘やかに抱き寄せてくるのだった。


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