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イケメン戦国《私だけを囲うひと》

第8章 恋仲になりまして



——夜

人目を避けるように連れてこられたのは、城の奥にある静かな庭だった。

昼間とは違う、ひんやりとした空気。
月明かりだけが、淡く辺りを照らしている。

「……綺麗」

思わず漏れた声に、隣の気配がわずかに動いた。

「気に入ったか」

「はい…」

こんな場所に、二人きりで。
それだけで、胸が落ち着かない。
隣にいるだけなのに、距離が近く感じてしまう。

沈黙が続く。
でも、不思議と嫌ではなかった。

「……あの」

静かすぎるのに耐えられなくなって、私は口を開いた。

「なんだ?」

「その…逢瀬って、何をするんですか…?」

聞いた瞬間、自分で顔が熱くなる。
何を聞いているのだ、私は。
でも、仕方ない。
気になるものは、気になるのだから。

すると、隣から小さな笑い声が落ちた。

「さてな」

「え…?」

「決まりなどない。…お前は、何をしたいのだ?」

「わ、私…?」

急に問われて、言葉に詰まる。
したいことなんて——

いっぱい、ある。
でも、言えるはずがない。

「……何も、思いつきません」

小さくそう答えると、

「嘘だな」

即座に返された。

「え…っ」

顔を上げた瞬間。
すぐ目の前に、光秀さんがいた。

「顔に出ている」

「……っ」

逃げようとしたのに、するりと手首を取られる。
そのまま、引き寄せられた。

「ならば、俺が決める」

低く、囁く声。
心臓が、うるさい。

「まずは——」

指先が、頬に触れる。
びくりと肩が揺れたのを見て、わずかに目を細める。

「触れられることに、慣れろ」

「……え?」

思わず聞き返すと、

「恋仲なのだろう?」

当然のように返される。

「触れもせずに、何をする」

「そ、それは…」

言い返せない。
でも、そんなこと急に言われても——

「嫌か?」

ふっと、光秀さんの力が緩む。
試されているみたいだ。






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