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イケメン戦国《私だけを囲うひと》

第8章 恋仲になりまして


〈葉月side〉

「随分と、楽しそうだな」

背後からかけられた声に、びくりと肩が跳ねた。
振り返ると、そこには光秀さんが立っていた。

「み、光秀さん…!」

先ほどまで話していた相手も、彼の姿を見ると慌てて頭を下げ、その場を離れていった。
残されたのは、私と光秀さん、二人だけ。
さっきまでの穏やかな空気が、一瞬で張り詰めた。

「……あの」

何か言わなくちゃ。
そう思うのに、言葉が出てこない。
視線を逸らしかけた、そのとき。

「恋仲の男を放って、他の男と笑う余裕があるとはな」

「……え?」

思わず、顔を上げた。
今、なんて——

「こ、恋仲…って」

「違うのか?」

低く問われて、息が詰まる。
違うわけがない。
あの夜、確かにそうなったはずなのに。

でも。

「……あの、」

言葉が続かない。
だって、何も変わらなかったから。
あの日からずっと、光秀さんはいつも通りで。
私だけが、一人で意識して、一人で戸惑って——

「……はっきりしないな」

小さく息を吐く音。
その一言に、胸がぎゅっと締め付けられる。

「す、すみません…」

俯いた瞬間だった。
ぐい、と腕を引かれる。

「え…っ」

気づけば、壁際へと追い詰められていた。
逃げ場が、ない。

「光秀、さん…?」

ため息をつくように「お前…」と言うと、逃がさないというように両側が腕に囲われた。

「俺のものになった自覚が、足りんのではないか?」

「……っ」

息が止まる。
そんな言い方、ずるい。

「な、なってないです!」

思わず反発すると、光秀さんの少し鋭くなった。

「ほう?」

「だって…」

言うつもりなんてなかったのに、止まらなかった。

「何も、変わらないじゃないですか…」

胸の奥に溜めていたものが、一気に溢れる。

「恋仲って言われても、実感なんてなくて…。光秀さんはいつも通りで、私に会いに来るわけでもないし…!それに…」

言ってしまった。
言いながら、自分で恥ずかしくなる。
でも、もう止められない。

「私ばっかり、意識して…バカみたいで…」

声が少し震えた、その瞬間。

「……なるほど」

ぽつりと落ちた声。
さっきまでの鋭さとは違う、どこか納得したような響き。

「そういうことか」

「え…?」

顔を上げると、光秀さんがわずかに口元を緩めていた。

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