十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
部屋に戻り、一向に治まることのない頭痛と、ひっきりなしに垂れてくる鼻水と戦いながら支度をしていると、床の上に置きっぱなしになっていたスマホが鳴った。
凄く嫌な予感がした。
普段ならまずこんな時間には鳴らないし、そもそも電話がかかって来ること自体、珍しい。
僕はスマホを手に取り、画面に目を向けた。
するとそこには雅紀さんからの電話を知らせる表示がされていて…
僕は咄嗟に通話ボタンを押した。
「もしも…し…?」
「あ、智? ごめんね、朝早くから…」
電話の向こうから聞こえて来る声は、一見落ち着いては聞こえるけど、いつもの雅紀さんとは全然違って聞こえる。
やっぱり何かあったんだろうか…
「どうしたんです、こんな時間に…」
僕は至って平静を装って答えるけど、内心では不安が渦巻いてて…
起きた時から僕を悩ませ続けている頭痛も、更に酷くなっている。
「雅紀…さん?」
「あのね、落ち着いて聞いてね?」
「うん…」
「実はね、昨日の夜…」
そこからは、雅紀さんが何を言っていたのか、良く覚えていない。
気がついたら、階段を転げるように下りて、靴を履くのも面倒で、母ちゃんのサンダルを履いて、僕は家を飛び出していた。