十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
翌朝、床の上で目が覚めた僕は、やたらとガンガン痛む頭と、油断するとツーッと垂れてくる鼻水に悩まされながら階段を下りた。
「おはよ…」
欠伸を交えつつ挨拶をした僕に、母ちゃんが睨みを効かせる。
「あんたでしょ」って。
でも僕は気付かないフリをして椅子に座り、母ちゃんが用意してくれた朝ごはんに手を付けた。
頭痛過ぎて、とても母ちゃんと口論する気にもなれなかったから。
母ちゃんも母ちゃんで、僕が頭痛そうにしてるのに気付いたのか、何も言わずに僕の額に手を当て、それから自分の額にも手を当てた。
「熱はなさそうね」って。
流石母ちゃんだよね。
何も言わなくても、分かっちゃうんだもん。
凄いよ。
「それはそうと…」
母ちゃんが手に持っていた包丁をまな板の上に置き、僕を振り返った。
「昨日の夜なんだけどね、二宮さんのお宅の前に、救急車が停まってたのよ…」
「え…?」
「あんた和くんから何か聞いてない?」
「僕は…何も…」
聞くも何も、ニノからはあれ以来連絡もないし、僕が送ったLINEの返信すらないんだから、僕がニノん家の事情を知ることすらない。
「隣の家で何かあったんじゃない? ほら、じいちゃんが一人で暮らしてたじゃん?」
じいちゃんには悪いけど、出来ればそうであって欲しいと、何故か押し寄せて来る不安の中、僕は強く願った。