十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
取るものも取りあえず、ってこうゆうこと言うんだってくらい、雅紀さんとの待ち合わせ場所に着いた僕は、雅紀さんに驚かれるくらい酷い格好で…
「とりあえずコレ、着ときな」って、雅紀さんは自分の着ていたネルシャツを脱ぎ、僕の肩にかけてくれた。
なのに僕はお礼すら言えなくて…
「それで? どうなってるの?」
僕は車のエンジンをかけようとする雅紀さんの手を掴んだ。
「電話でも言ったけど、実際のとこ、オレもあんまり状況分かってないんだ」
雅紀さんは、逸る気持ちが抑えられない僕とは違って、随分と落ち着き払っているように見える。
やっぱり雅紀さんは大人だ…って思うけど、僕は雅紀さんみたいにはなれない。
雅紀さんが僕の手をやんわりと解き、漸く車のエンジンがかかる。
僕は窓の外の流れる景色を見ながら、どうにか不安ばかりが募る気持ちを逸らそうとするけど、やっぱり無理で…
信号が赤に変わる度、不安が苛立ちへと変わって行くのを感じていた。
そんな僕の心の変化を、きっと雅紀さんは気付いていたんだと思う。
無言で僕の手を握ってくれた。
ただ、それで気持ちに変化があるわけでもなくて…
でも、いくらかは…本当に僅かなんだけど、胸のざわつきはおさまったような気はした。