第24章 Genesis3:9
遠くで、鳥の鳴いている声が聞こえた。
「あ、鳶…」
潤の言葉に、思わず空を見上げる。
曇天の空に小型の鷹みたいなシルエットの鳥が、円を描いて飛んでいた。
「なに?鳥なんか詳しかったっけ?」
潤が鳥の名前なんか言うのが珍しくて、思わず聞くと少し顔をしかめた。
「違うって…この前お台場で昼休憩に外でパン食ってたら、持ってかれたんだよヤツに」
「ええ…?そんなのテレビでしか見たことないんだけど」
「そんな珍事が俺にも起こったってことなんだって」
潤が手に持っていたパンを鳥に攫われていく姿を想像したら、笑えてきた。
「くっ…くくく…」
「なんだよ、翔。あいつはなあ、どんな隙でも狙ってくるんだからな!?」
「わ、わかっ…わかったっ…ぶぶぶ…」
リハビリに励んでいるうちに、結構な時間が経っていて、気づけばもう2月になっていた。
今年に入って東京はそれほどひどく冷えることもなく、最近は花粉の季節っていうことで花粉症の潤は外に出るのを極端に嫌がっていた。
でも俺が職場についてきてくれって言ったら、二つ返事で引き受けてくれた。
今日の朝、潤はマンションの下まで迎えに来てくれた。
自分の足で歩いている俺を見て、潤は顔を真っ赤にしてしばらく俯いたままだった。
その後、昔と同じように笑って俺の肩を強く叩いた。
言葉では言わないけど、とても喜んでくれているのを感じて。
少し泣きそうになった。