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*名探偵コナン*短編集*

第4章 *File.4*降谷 零*(R18)


「バカね。どれだけ優しいの」
「オレは…死ぬほど後悔した」
「えっ?」

オレを見上げる泣きそうな瞳が、驚きに変わる。

「あの時、ゼロの存在を消し去るぐらい、本気で雪乃を口説けばよかった。雪乃の心まで、オレのモノにすればよかったってね」

雪乃の中にずっとゼロの存在があることを、ゼロと松田以外は知っていた。
雪乃本人が隠し通すならと、オレも萩原も班長も徹底的に素知らぬフリをして、決して言葉にはしなかった。
だが、あの夜の後、間もなくして黒の組織に潜入することになった。
警察庁公安のゼロと共に。
何故、あのタイミングだったのか?
あの任務さえなければ、と、今でも考える。
逆に言えば、オレと雪乃は初めからこうなる運命だった。とも考えられる。

「…もう、泣かさないでよ」
「雪乃は、ゼロと幸せになれ」
「ヒロ…」

君を幸せに出来るのはオレじゃない、から。
二人きりで過ごしたあの夜を、後悔してないとゼロに言い切った雪乃の想いは本物だから。
ようやくオレ自身も、ちゃんと正面から受け止められるようになったから。
雪乃もオレも、もう大丈夫。

「これでオレもやっと前に進めそうだよ、ゼロ」
「えっ?!ウソッ!?」

オレの視線の先を追うように雪乃が急いで振り返れば、建物の陰から姿を現したのは、初めから全てを聞いていたゼロ。

「そんなことだろうと思った」
「な、何で?」
「ごめん」
「…ヒロ」

一言の謝罪で、雪乃には全て伝わったはずだ。

「雪乃がそこまで隠し通そうとする人物且つ、雪乃が全てを委ねることが出来る人物を考えれば、該当者は松田かヒロしかいない」
「「……」」

そうだな。

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