第4章 *File.4*降谷 零*(R18)
「ごめん」
「オレってコトもバレた?」
約束の時間通りに此処に着くなり、雪乃は謝罪の言葉を口にした。
勿論、意味は分かっている。
「それはないよ」
「相手が相手だ。バレるのも時間の問題だな」
「かもしんない」
「愛されてるな」
「…何処が?」
「雪乃に関してゼロは凄く過保護だ。本人も全く自覚はないけどね」
「そうかなー?陣平と研ちゃんと変わんないよ」
「アイツらも十分過保護だよ」
何時も周囲からどれだけ守られて来たのか本人も多少は自覚しているのだろうが、それはきっと雪乃の予想を遥かに超えている。
「うーん」
「自覚無しか」
「あの二人は子供の頃から何にも変わんないよ。それからね、私、ゼロにちゃんと言ったから」
「…何を?」
「あの夜のこと、私は後悔してないって」
「…で?」
「何かよく分かんないけど、多分、一気に色々爆発してた」
「くくくっ」
「いや、笑いごとじゃないから!私、マジで死ぬかと思ったから!」
強引に吐かされたが最後、一晩中、抱き潰された、か。
「二人揃って、管理官様々だな」
「って、何時まで笑ってんの!」
「くくくっ。あのゼロが恋愛で嫉妬に狂う、か。過去に一度足りとも、見たことも聞いたこともないよ。雪乃は聞かなかったのか?」
アイツは負けず嫌いの熱いオトコだよ、昔から。
普段のゼロからは、想像も出来ないだろうけど。
「うん。聞いたトコでどうにもなんないし、ゼロがちょーモテることは出逢った頃から変わんない」
「損な性分だな」
真っ直ぐに空を見上げて、本人には何も言わずに気にもとめてないフリをする。
嫉妬と言う感情を、見事なまでに自分の中に隠し押し止(とど)めてまでも。
「私が?」
「ああ。だから、放っておけない」
「…ヒロ?」
「これで最後」
保証はしないけど、ね。
ふわりと抱き締めれば、変わらない温もりと優しい香り。
ゆっくりと伸ばされた手は、少し迷ったようにオレの背中を抱き締めた。