第4章 *File.4*降谷 零*(R18)
過去を知ったからと言って、雪乃を手離すことが出来るか?
応えはNOだ。
過去は過去。
お互いが今更どうしようもない。
それに、だ。
雪乃をこの手に入れた今、何があっても手離せない。
何よりも。
今現在の雪乃の俺に対する想いは、本物だ。
そこに嘘偽りはない。
それは俺が断言出来る。
「……ん」
「起こしたか」
汚れたシーツを取り替えてから、またベッドで寝かせていたが、寝室のドアを開いた音に反応したらしい。
「…零?」
「何だ?」
「夢じゃ、ない?」
「夢の方がよかったか?」
ベッドの端に腰を掛け、髪を撫でれば、腕を掴まれる。
「!!」
「ふっ」
あれだけ抱かれたくせに、今更照れて顔が真っ赤になっている。
どれだけ可愛いんだよ。
「ヤダ」
「ん?」
「零は誰にもあげない」
「……」
「ずっと…欲しかった、から」
「何を?」
フイと顔をそらす。
「…零の、心」
「!」
「その目に映ればいいのにって。親友の従妹じゃなくて、仕事仲間じゃなくて、一人のオンナとして。ずっとそう願ってた」
「もうその心配は要らない。雪乃は俺が愛する、たった一人の女性だ」
両手で雪乃の頬を包み込むと、視線を合わせて、ゆっくりと言い聞かせる。
「…信じて、いい?」
「ああ、信じさせてやる。何時何処にいても、何度でもな」
「うん」
話すセリフは一端のオンナのくせに、頷いたその表情はまるで恋する乙女のように幼さを伴ったモノで。
「……」
これはこの先相当振り回されることになりそうだ、と、キスをしながら覚悟を決めた。