第56章 返事 ✴︎
「まさか……あの時あいつが話してたのって…」
いや…そんなわけないよな。
同じ名前の子だっているだろうし…
頭では違うだろう、と分かっているのに
同一人物なんじゃないかって思えてならない。
でも待てよ……確かあの時ヒロはこうも言ってたな…
ーーー…
「その子さ、すごく料理に詳しそうだったから
将来は料理人になりたいのか聞いたんだ。
そしたら学校の先生目指してるって言ってたんだよ。」
ーーー…
ヒロがそう言っていたのを思い出して
警察学校で話した事がある少女が美緒さんだと…
そう確信してしまった。
「出会ったのは…必然だったのか…?」
自問自答したところで答えは分からない。
でも僕は美緒さんと出会えた事…
彼女に惹かれた事を運命としか思えなかった。
ヒロ…
お前が美緒さんと僕を出会わせてくれたのか…?
だが彼女は
僕がこの世で最も憎んでいる男を愛しているんだ。
隙があれば奪う、なんて宣言したけど
僕が入り込む余地なんて全然ないんだよ…
あの2人は悔しいくらいに
互いを大切に思い合っているから…。
でも…簡単に諦められる気持ちじゃない。
この先の未来なんてどうなるか分からないし
いつか美緒さんが僕のものになることも…
ゼロに近い、1%にも満たないその可能性を信じて諦めなければ報われるのだろうか。
「安室さん…?」
「…。」
「安室さーん!大丈夫ですか?」
「っ、え…?」
「どうしたんですか?ぼーっとしちゃって…
珍しいですね?」
「梓さん…いえ、なんでもないです。」
「そうですか…?
じゃあ今日のランチタイムも頑張って働きましょうね!」
「はい…。頑張りましょう!」
いくら考えたって答えが出るわけじゃない。
僕は僕の正しいと思ったことをすればいいんだよな…?
ヒロ達が生きてたら…きっとこういうはずだ…
"最後の最後まで絶対諦めるな!!"
ってな…。