第55章 再会
「美緒さんは明日も仕事でしょう、
送っていきます。」
『…うん……お願いします。』
警察の人や江戸川くん達にも挨拶をした後
私は昴さんに肩を抱かれ、車で家に送ってもらう事になった。
帰り道の車の中、
色々と赤井さんに聞きたいことがあって尋ねてみた。
まずは今日起きた事件のこと…
『あのマネージャーの女性が
本当に波土さんを殺害した犯人だったの?』
「いや…波土禄道は自殺したんだ。
彼女は殺人に見せかけるように偽装したんだよ。」
『え!?どうしてそんな事を…?』
赤井さんに詳しく話を聞くと
17年前…波土さんの恋人だったその女性は
波土さんの子をお腹に宿していたが流産してしまい…
その原因は
生まれてくる子供のためにデビューしたての波土さんが、連日徹夜で作曲し続け
彼を止めにスタジオに来た彼女が倒れてしまった事によるもの。
つい最近、レコード会社の社長からその事を聞いた波土さんは、自分のせいで亡くなった子供の為に歌詞を書き
新曲として発表しようとしたが、どうしても書けずに
"ゴメンな"の文字を遺して死を選んだとのことだった。
『でもなんで…殺人に見せかける必要が…?』
「自殺したと分かったら、その訳を調べられるだろう?
元恋人の子供のせいで彼が自殺したと世に知られれば
彼の家族に申し訳が立たない、と…そう言っていたよ。」
そうだったんだ…
じゃあ新曲のタイトルの"ASACA"は
産まれてくるはずだった子供の名前…?
「ちなみに"ASACA"のカの字が"CA"だったのは
妊娠していた事を聞いたのが
徹夜明けの朝、カフェで聞いたから…
カフェは英語で"Cafe"と書くから、女の子供だった場合
アサカと名付けようとしていたらしい。」
『じゃあ赤井さんが気にしてた
17年前の事件とは関係なかったんだね。』
「ああ…恐らく今日安室くんが来ていたのも
組織からの命令で、未発表の歌詞の内容を探る為だったんだろうな。」
そっか…
じゃあやっぱり榎本さんに変装してたあの女性も
組織の人だったってことかな…