第55章 再会
『っ、安室さん…!』
「美緒さん…もう体調は大丈夫なんですか?」
『はい…大分落ち着きました…』
「そうですか……よかった。」
『あの…この前のお返事をちゃんとしたくて…
今度の休みにまたポアロに行ってもいいですか…?』
私の言葉に少し驚いた表情をした安室さん。
でもすぐに笑顔に変わり、「待ってます」とだけ言い
建物から出て行った。
そして安室さんの後を追いかけるように榎本さんも建物の出口に向かって行き、彼女にも話があったから私は声を掛けた。
『榎本さん!少しいいですか…?』
「?どうしたんですか?美緒さん。」
『…。』
やっぱり…
この人、榎本さんじゃない…。
でも絶対、とは言い切れなくて
私は榎本さんに近寄り、耳に顔を近づけて、こっそり話すことにした。
『あの…間違ってたらすみません…
あなた…榎本さんじゃない…ですよね…?』
「っ…!?」
『榎本さんは私の事を若山先生って呼んでいるんです。
だから…』
あなたは一体誰なの…?
どうして榎本さんとそっくりな姿なの…?
そう尋ねようとしたら
私の方に顔を向けてフッと優しい笑みを溢していた。
「だめよ、pretty girl…
あなたはこちら側に関わっちゃだめ。」
『っ、え…?』
pretty girl って…
確か昔、アメリカにいた頃に見たテレビで…
「It's a big secret.…I can't tell you.
A secret makes a woman woman…」
『!!』
その台詞は…
女優のシャロン・ヴィンヤードが言ってた…
『え…?え…!?』
意味がわからなくてパニックに陥っていると
榎本さんの姿をしたその人はすでに居なくなっていた。
「美緒さん…?どうしたんですか?」
『あ…昴さん…』
いつの間にか私のそばに昴さんが立っていて…
体調は良くなったけど
今度は慌てふためいている私を見て
心配そうな目を向けられていた。