第55章 再会
「まだ顔色が優れませんね。」
『大丈夫…って言いたいところだけど
ちょっとまだ…しんどくて…』
「事件が解決したらすぐに帰りましょう。
もう少しの辛抱です。」
昴さんの言葉に頷いていると、
高木刑事から遺体の胸ポケットに"ゴメンな"と書かれた紙が入っていたことと、それは犯人がいれたものかもしれない、と聞かされ
私達は筆跡鑑定を行うことになった。
高「ではまず、若山先生からお願いします。」
渡された手帳に"ゴメンな"の文字と自分の名前を書き
高木刑事に手帳を返すと、今度は安室さんに書いてもらうようにお願いしてたけど…
高「安室さん…、安室さん?」
安「…。」
高「安室透さん?」
安「!!あ…はい、なんでしょう。」
…今日の安室さんは少し様子が変だ。
ぼーっとしてるっていうか
何かを考え込んでいるような…そんな感じがする。
高「では次、沖矢さんお願いします。」
次に手帳を渡された昴さんは左手で文字を書いていて、安室さんはジッとその様子を見つめていたけど、書き終わると彼に近づいて行った。
安「沖矢さん、左利きなんですね?」
「ええ、まぁ…いけませんか?」
安「いえいえ。この前お会いした時は
右手でマスクを取られていたので右利きなのかなぁ…と。」
「…そうでしたか?」
…なんか胃が痛くなってきた。
やっぱり安室さん、
昴さんが赤井さんだって気付いているんじゃ…?
安「まぁ、気にしないで下さい…
殺したい程憎んでいる男が…レフティーなだけですから。」
昴さんにそう伝えている安室さんは
本当に赤井さんを憎んでいる雰囲気が出ていて…
怖い、と思ってしまうくらいだった。
梓「…大丈夫ですか?」
『へっ…?』
顔を上げると、いつの間にか榎本さんが
私のそばに来ていて声を掛けてきた。
梓「何だか思い詰めたような顔をしていたようですけど
心配事でもあるんですか?」
『いえ!全然そんな事はないので!』
梓「…ならいいですけど。
美緒さんにはそんな表情は似合いませんからね!」
そう言いながらウインクをする榎本さんは
すごく可愛かったんだけど……
彼女はいつの間に私の事を下の名前で呼ぶようになったんだろう…