第55章 再会
私の悲鳴を聞いて駆けつけてくれた昴さん…
首を吊った波土さんの死体を見た私は
体から全身の血が抜けるような感覚がして
上手く呼吸が出来ず、かなり取り乱してしまった。
そんな私を昴さんは優しく抱きしめてくれて
恐怖を拭うように彼の胸に顔を埋めた。
背中をトントンと叩きながら
上手く呼吸が出来るように促してくれる言葉と
昴さんの服についているタバコの香りを嗅ぐと、すぐに落ち着くことが出来た。
『ご、めん、なさい…昴さん…』
「謝らなくていい。俺はここにいる…だから安心しろ。」
耳元で私だけに聞こえるように囁かれ、
声は昴さんだけど、いつもの赤井さんの口調を聞くとすごくホッとした。
『ありがとう、昴さん。私はもう大丈夫だから…
事件の事、調べてきて?』
「いや…それは…」
『気になるんでしょ?
私は蘭ちゃん達と一緒にいるから。』
「…わかりました。
すみませんが美緒さんの事をお願いします。」
昴さんはホールのステージの方へ向かって行き
安室さんと江戸川くんと一緒に捜査をしているようだった。
蘭「若山先生、まだ顔色が悪いですよ?
入り口付近に椅子があったからそこで座ってた方がいいです。」
『そうしようかな…ありがとう、蘭ちゃん。』
園子ちゃんと榎本さんも一緒に入り口へ戻り
しばらく椅子に座っていると数台のパトカーが会場の前で止まり、警察が到着したようだった。
そして現場検証が済むと
建物にいた私達やスタッフの人達への簡単な事情聴取が行われた。
高木「若山先生、あなたが第一発見者と聞きましたが
ステージ付近に怪しい人を見かけたりしませんでしたか?」
『いえ…扉を少し開けたら最初に客席が視界に入りましたけど、誰もいませんでした。もちろんステージ付近にも…』
どうやら波土さんを殺害した犯人は複数犯かもしれないようで、死亡推定時刻に姿が確認できなかったのは
波土さんのマネージャーである女性と
レコード会社の社長である男性の2人だけだったようだ。
その2人が目暮警部さんや高木刑事さんにいくつか質問されている様子を見ていると、昴さんが私の元に近付いてきた。