第54章 放心
「隣にいるのはいいんだが…一つ頼みがある。」
『?頼みって…なに?』
「…その服のボタン、ちゃんと1番上も閉めてくれ。
目のやり場に困る…。」
『っ!?』
赤井さんに言われて服に目を向けると
上から見ることで胸の谷間が見えてしまっていて
赤井さんからも丸見えだったのかもしれない…。
『ご、ごめんっ!!
別にその…わざとじゃなくて…!!』
「分かってる。だがお前と2人きりでいて
手を出さないようとするのに俺も必死なんだ…
そんな姿をずっと見ていたら襲いたくなる。」
顔を背けながら話す赤井さんを見てると
きっとその言葉は本心なんだと分かり
私のために我慢してくれているその優しさが愛おしくて
ボタンを閉めた後、赤井さんにギュッと抱きついた。
『赤井さん…大好き…』
「っ、馬鹿…襲うぞ。」
『ふふっ。』
赤井さんは私が生理の時まで襲うなんて
野蛮な事は今まで一度もしてこなかった。
だから今の言葉はきっとただの照れ隠し。
照れてる赤井さんを見る事ができるのは
世界中で唯一私だけ…
そう考えるといつも幸せな気分になるんだ。
赤井さんの背中からゆっくり離れ
2人でソファーに座り、私は小説を読む事にした。
『邪魔しないように優作さんの小説読んでるね。』
「そうか…今は何を読んでいるんだ?」
『緋色の捜査官!映画の作品だけど
文庫本でも売ってたから買っちゃった!
これに出てくる主人公が凄くかっこいいの!』
「…。」
『え…なに…?なんか変な事言った?』
「いや…なんでもない。」
赤井さんの反応からして何かありそうだったけど
すごく気分が良さそうだから
あえて突っ込まずに私は読書に集中し
赤井さんも夜までずっと機嫌がいいまま仕事をしていた。
このソファーに2人で座る時、恋人になる前は
2人の間に1人分のスペースがあったけど
今はもう隙間を開ける必要はない…
そう考えるとまたさらに幸せな気分になった。