第53章 詫言 ✴︎
玄関でのやり取りを終えてから
2人でダイニングに向かい、赤井さんが作ってくれた夕食を食べることになった。
『っ、美味しい!
赤井さん、すっごく美味しいよ!!』
「そうか…よかった。」
出会った頃は料理が苦手だと言っていたのに
こんなに美味しいシチューまで作れるようになった赤井さんは本当にすごいと思う。
ただでさえ頭も良くて強くてかっこいいのに
料理上手だなんて、この人には欠点なんてないんじゃない?
そんな事を考えながら夕食を食べ終えたところで
食器の片付けをしようと立ち上がると
赤井さんのスマホから着信を知らせる音が聞こえた。
「…悪い、仕事の電話だ。」
『じゃあ先に1人で片しておくね!」
夕食の用意をしてくれたんだから
片付けは私1人でやるって言ったのに、それでも手伝うと言う赤井さんは優しすぎると思う。
私に断りを入れた赤井さんは
ダイニングからリビングの方へと移動し電話に出ていた。
何を話しているのかは聞こえなかったけど
食器を全て洗い終わり、タオルで濡れたお皿を拭いていると電話を終えた赤井さんがキッチンに戻ってきて
私の後ろに立ち、ギュッと体を抱き締めてきた。
『赤井さん?どうしたの?』
「すまない…
明日やらなければならない仕事が出来てしまった。」
…ってことは明日は2人で過ごせないんだ。
『仕事なら仕方ないよ。
私は大丈夫だからそんなに気にしないで?』
「…お前は物分かりが良すぎる。
普通は怒るところだろう…」
そんなことないと思うんだけどな…
そもそもFBI捜査官なんて忙しいに決まってるし
急な仕事が入ったっておかしくないよ。
『確かに残念だと思ってるし寂しい気持ちはあるけど
私は一生懸命仕事をしてる赤井さんも…好き、だから…』
恥ずかしさに耐えながら気持ちを伝えると
私を抱き締める赤井さんの腕の力が少し強くなった気がした。
「お前はいつも俺に甘いな。」
『そ、そうかな…?』
「詫びと言ってはなんだが…
今日の夜は俺がお前を沢山甘やかしてやる。」
『え、…っ…!?』
その言葉に驚いていると
赤井さんの手が私の顎に添えられて、顔を少し後ろに向かされた。