第53章 詫言 ✴︎
「俺も…優しい美緒が好きだ。」
『っ…』
視線を合わせて伝えられた言葉にドキッとしていると
赤井さんの顔が少しずつ近づいてきて
キスをされる、と分かり目を閉じようとした時…
ピリリリーッ
『!!』
「…。」
今度はキッチンカウンターに置いていた私のスマホが着信し
赤井さんは不機嫌な表情で私からスッと離れた。
『っ、ご、ごめん…』
「はぁ…気にするな、出ていいぞ。」
いやいや、思いっきりため息ついてるじゃん!!
っていうか私だってキス出来なくて残念に思ってるよ…
一体誰が私達の邪魔をして
電話を掛けてきたんだろう、とスマホの画面を見ると
そこには安室さんの名前が表示されていた。
『…。』
「出ないのか?」
『あ…え、っと…』
電話に出るのを渋っている私を見て
赤井さんは不思議に思い、スマホの画面を覗き込んできて…
安室さんの名前を見ると眉間に皺が寄っていた。
「…スピーカーで話せ。」
『うん…。もしもし…?』
言われた通りに通話ボタンをタップしてから
スピーカーボタンを押すと、安室さんの声が聞こえてきた。
「すみません美緒さん、夜分遅くに。」
…そう思うなら電話かけてこないで下さい。
あなたのせいで赤井さんが不機嫌になっちゃったんだから。
『大丈夫ですけど…何かご用ですか?』
「明日はお仕事お休みですよね?
何か予定は入っていますか?」
本当は赤井さんと過ごす予定だったけど
仕事になっちゃったから……特に何も予定はないと伝えた。
「実はポアロで困った事が起きまして…
美緒さんのお力を貸して頂きたいんです。」
『え…!?えーっと…』
なんて返事しようか迷っていると
またすぐに安室さんの声が聞こえてきた。
「先日僕があなたのお世話をした事…忘れてませんよね?」
『!?』
この人…警察官のくせに
まるで私に拒否権はないと脅迫してるみたいなんですけど。
でも確かに赤井さんと揉めてしまった時のお詫びを
ずっと出来ていなかったのは事実…。