第52章 親友 ✴︎
『あ、でも昴さんならセンスいいし
自分で選んだ方がいいんじゃ…』
「はぁ…お前は本当に馬鹿だな。」
『なっ…!ば、ばか!?』
「美緒が選んだ服を着たいと思ってる事くらい察してくれ…
こんな恥ずかしい事をわざわざ言わせるな…」
…そんなの私に分かるわけないじゃん!
でも…
昴さんに変装してる状態だから顔色は変わらないけど
声のトーンとか、顔に手を当てている仕草を見たら
照れているのが分かった。
『普段メンズ服とか見ないから自信ないけど…
昴さんの為なら…選ぶ…。』
「…外でそんな可愛い事を言うな、馬鹿。」
また馬鹿って言われた…
それに可愛く思われることなんて言ってないのに
男の人の考えることってよく分からない…。
何て言い返したらいいか分からないままでいると
昴さんに手を引かれて私達はメンズ服の店に入った。
『うーん…昴さんなら何でも似合いそうだけど
やっぱり今持っていない色がいいよね!』
「黒は何枚か持っている…あとは暗めの色が多いな。」
『それなら……あ、これなんてどうかな?』
提案したのはライトグレーのハイネックニット。
これなら昴さんが時々着ている
ジャケットにも合わせやすいし、赤井さんでも似合いそう。
『あとこれに合わせてボトムスも…』
手に取ったのはオリーブ色のテーパードカーゴパンツ。
これも絶対昴さんに似合うし
足が長いからカッコよく着こなすだろう…
『あ!この白いニットも絶対似合う!
それにレッドとブルーのハイネックもいいな〜!
これには白のスキニーとかが合うかも!!』
「美緒…そんなにあっても置き場に困る。」
『!!そ、そうだよね…ごめん…』
つい調子に乗って色々と選び過ぎた…
だって本当に何でも似合いそうで
色んな色の服着てるところを見たいんだもん…!
結局、最初に選んだライトグレーのニットと
カーゴパンツだけを試着することになり
店員に案内されて、私は試着室に入った昴さんを外で待っている。