第52章 親友 ✴︎
「紗栄子さんはどんなお仕事をされているんですか?」
「私はファッションデザイナーの仕事をしてます!
そういえばこの前、美緒の水着見ました?
あれは私がデザインした試作品だったんですよ。」
あの時の黒いビキニか…
じゃあ私は知らないうちに試着させられてたんだ…
本当にこの子は昔からそういう事言わないんだから…!
「もちろん拝見しましたが、
今度からはもう少し布の面積を増やして頂けませんか?
美緒さんの綺麗な肌は出来るだけ誰にも見せたくないので。」
『っ、ちょ、ちょっと昴さん…』
「あははっ、分かりました。今度から気をつけますね?」
…絶対気をつけるつもりないな。
長年の勘がそう言ってる…。
「昴さんは何をされている方なんですか?」
「東都大学の工学部の大学院生です。
時々知り合いの博士の研究のお手伝いもしていますよ。」
「うわっ、すごい!エリートじゃないですか。」
…本当はFBI捜査官なんだけど
さすがにそんなことは話せないよね…。
友人に嘘をつくのは心が痛むけど
いつかちゃんと正直に話せる日が来るといいな。
和やかな雰囲気のまま色々なことを雑談していると
私のスマホから着信を知らせる音が聞こえた。
『ちょっとごめん……あ、小林先生からだ。』
「仕事の電話?」
『うーん…今日は仕事休みのはずなんだけど
何かあったのかもしれないから…』
「出てもいいですよ。紗栄子さんと待ってますから。」
『そう…?じゃあ外で話してくるね…?』
2人だけにするのは少し心配だったけど
きっと昴さんなら大丈夫だろう…
…紗栄子が何か余計な事を話さないかが不安だけど。
私は1人で席を立ち、カフェの外に出て小林先生の電話に出た。
電話をかけてきた理由は
最近小林先生にできた彼氏である刑事さんにお弁当を作りたいから、おすすめのレシピを教えて欲しいとのことだった。
微笑ましい電話の内容につい私も嬉しくなって
お弁当向きのレシピをいくつか伝えてから電話を切りカフェの中に戻った。
…その間、昴さんと紗栄子が話していた内容は
私は教えてもらえなかった。