• テキストサイズ

【鋼の錬金術師】紅の幻影

第13章 あんたたちの代わりに








「そう、だな。明日は出発だから早めに体休めないとな」

だというのに、エドワードくんは突っかかることもなく簡単に引き下がった。
どこか寂しそうな笑顔を残して。

痛い、心臓が、とても。
そんな顔をしないで。
簡単に引き下がらないで。
いつものように強引に引きとめて。
私と一緒にいたいなんて思わないで。
私は、あなたとこれ以上距離を縮めたくなんて……。
あなたのことをもっと知りたいなんて……。
思わせないで。

「……」

夜の闇に吸い込まれそうなほどの小さく透明な声が私の耳に届く。
はっと顔をあげると、エドワードくんがまっすぐに私を見つめている。

「戻ろう。アルたちが心配してる」

先ほどとは雰囲気が変わり、エドワードくんはいつもの彼に戻った。

何を期待していた。
自分から遠ざけておいて。
寂しいだなんて。
自分勝手もいい加減にしろ。

「……はい」

私は静かに返事をして、彼と一緒に家の中へと入った。

次の日。
ウィンリィさんとパニーニャさんと別れの挨拶をし、私たちはラッシュバレーを後にした。
昨日の心の余韻はまだ私の中にある。
けれど、見ないように、気付かないように、そっと蓋をした。
きっと彼もそうだろう。
だから、以前と変わらずに"普通"の関係でいられる。

「ダブリスまであと少しですね」
「に、兄さん……。ど、どうしよう、ボク、震えが止まらないよ……!!」
「深呼吸だ!!深呼吸をするんだ!!」
「…………………」

昨日の心の余韻が一瞬にして消えたような気がする。
それはそれでよかった。
私は一つ息を吐いて、恐怖に慄く彼らの姿をおもしろおかしく見つめた。







/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp