第7章 クリスマスお題 ちぐはぐメリークリスマス!
まさか2人にそんな噂をされているなど露とも知らない伽那夛は人目のない道で思い切り術式を使ってかっ飛ばしていた。
周辺には一般人の呪力の気配はないので、スーパーの前の道路に出るまでこのまま行ける……と思っていたのだが、
「何やってんだよ?」
「!?」
覚えのある声に引き留められ、急ブレーキをかけて振り向くと、そこには甚爾が立っていた。
「なんでこんなところにいるのよ!?仕事じゃなかったの?」
以前、歌姫を巻き込んで図書館でクリスマスについて調べた時、クリスマスは家族で祝うものという記載があり、伽那夛は甚爾にも声を掛けていた。
だが、この日は仕事があるからと断られたのだ。
津美紀の母親はそもそも連絡先が分からなかったので、家族が集まれない代わりに思い切り楽しいパーティーにしようと画策していた。
それなのに甚爾がここにいるのは、家に帰る途中だったとしか思えない。
一体どういう風の吹き回しで?
伽那夛の聞きたいことをその表情から読み取った甚爾はポケットから何かを取り出す。
「津美紀にな、今日の仕事は早く終わらせろってせっつかれた」
見せられたのは折り紙で作られた花型のメダル。
中央には可愛らしい丸文字で“しょうたいじょう”と書かれている。
「……津美紀、やるじゃない」
思わず伽那夛の口角が上がった。
「そういうことなら、今から買い物に付き合って?」
「はぁ?」
「恵のお誕生日おめでとうプレートとロウソクを買いに行くところだったのよ。それに、あなたは来れないと思っていたから食材も足りないわ」
「あー……そういやアイツ、誕生日だったか」
「ちょっと!そこはちゃんと覚えておきなさいよね!」
まるで今思い出したかのような言動をする甚爾に伽那夛は口を尖らせる。
「とにかく津美紀達には10分で戻るって言ってあるから、早く買い物に行くわよ!」
「10分って、オマエ……走ってギリじゃねぇか」
「だから走るのよ!」
そうして甚爾を無理やり買い物に付き合わせ、プレートとロウソク、足りない食材を買い揃え、宣言通り10分で戻った伽那夛は津美紀達を大いに驚かせた。