第74章 残像
『よしっ、じゃあ上原刑事に
諸伏警部が目を覚ましたこと、連絡して来ますね?』
私は電話をかける為に
椅子からスッと立ち上がり
一旦病室の外に出ようとしたが…
立ち上がった瞬間、諸伏警部に手首を掴まれた。
『えっ…、あの……?』
「…若山さん。」
『は、はい…』
「…。いえ、何でもありません。』
『??』
何かを言いかけた諸伏警部は
後に続く言葉を何も発しないまま、掴んでいた私の手を離した。
一体何を言うつもりだったのか…
私は不思議に思いながらも
早急に、上原刑事へ連絡するべきだと思い
一度病室を出て電話しようとしたが…
病院の通路に出ると同時に
コナンくんからメールが届いた。
【新一にいちゃんから送られて来た
今回の事件の真相、メールで送るね!】
『コナンくん…、工藤くんに相談してたんだ…』
てっきり、コナンくんが真相を明らかにしたのかと思ったけど…
そうではなかったことに拍子抜けしつつ
転送されて来た工藤くんのメールを読み始めた。
『……っ、まさか……あの人が…』
そこには犯人の名前が書かれていて
とても信じられなかったけど
事件の辻褄は全て合っていた。
『さすが…、有名な高校生探偵さんなだけあるね…』
コナンくんから話を聞いただけで
メールに綴られていた信憑性のある推理に驚いていると、また更にもう一通…
コナンくんからメールが届いた。
そこには、諸伏警部が救急車で運ばれた後、
コナンくん達が犯人によって起こされた雪崩に遭ったこと…
そして、公安の風見さんと協力し
犯人を油断させる為の芝居をして欲しい、という依頼が書かれていた。
『うーん…、いい手だとは思うけど…
気は進まないなぁ…』
たとえ芝居でも、諸伏警部を苦しめるのが心苦しい…。