第74章 残像
諸伏警部にどのように伝えるかは
また考えるとして、私は上原刑事に連絡し
彼の意識が戻った事を伝えた。
どうやら、上原刑事もコナンくんから
事件の真相を教えてもらったようで
今はみんなで国立天文台野辺山に向かっているとのこと。
その為、犯人を捕まえるまで
諸伏警部の側についていて欲しいと頼まれ
了承した私は電話を切り、再び病室へ戻った……が…
『電話終わりましたー…って、ちょっと!!諸伏警部!?』
「あぁ、県警に連絡するのは終わったんですね、
ありがとうございます。」
『いえいえ。お気になさらず…、
って、そうじゃない!!!!
なんで病院着からスーツに着替えてるんですか!?』
慌てて駆け寄ると
彼は私の言葉に耳を貸さず、ネクタイを結んでいた。
「私もすぐに県警へ戻ります。」
『はぁ?何言ってるんですか!?
しばらく安静にしないとダメですよ!!』
私が必死に止めているにも関わらず
諸伏警部はネクタイを締め終わると、小さく息を吐いていた。
「ここでジッとしている間に
敢助くんがまた襲われるかもしれません。
私は、彼と同期であり、ライバルであり…
友人でもあります。
また何か起こる前に、対策を練りたいのです。」
『っ…』
…確かに、諸伏警部の気持ちは分かる。
私も彼と同じ立場だったら
安静にするなんて絶対無理だし、同じように病院を抜け出すと思う。
でも、医者から聞いた話では
何日間か入院が必要な程の怪我だから…
このまま1人で行かせることなんて出来ない。
『全くもう…、やっぱり兄弟ですね、貴方達は…』
「え…?」
『私が怪我をして意識不明だった時
弟さんも、全身傷だらけの状態なのに
私の事を心配して…、安静にしてなかった事があったんです。』
…この話は、零くんに聞いたことで
今の諸伏警部を見ていると、きっと弟の諸伏くんも
自分の怪我のことなんて、全く気にしてなかっただろうな。