第74章 残像
炭焼き小屋に辿り着き、少し時間が経つと
救急車が到着して、救急隊員が諸伏警部を担架に乗せ、車内へ運んでいた。
大「上原、高明に付き添ってやってくれ。」
上「うん…、分かった。」
大「それと…、アンタも上原と一緒に乗れ。」
『え…?』
大和警部は私に目を向けていて
一緒に救急車へ乗るようにと促した。
大「高明が心配なんだろ?
それに、水に濡れたままだと風邪引くぞ。」
『でも…』
大「俺達なら大丈夫だ。」
また犯人に狙われるかもしれない大和警部が心配で、私はここに残るつもりだった…
でも、諸伏警部のことも心配だし…
大和警部は
そんな私の気持ちを理解しているようだった。
大「ほら、早く乗れ。」
『…。分かりました…。』
大和警部に大人しく従うことにした私は
上原刑事の隣に座り、救急車はバックドアが閉まり
病院へ向かった。
私の目の前には
意識のない状態の諸伏警部が横になっていて…
まだ心配な気持ちが抑えれない私は
水で冷えたことで赤色になっている彼の手を両手で包み込むように握った。
『諸伏警部…』
…こんな目に遭わせてしまってごめんなさい。
目を閉じたままの諸伏警部に
心の中で謝罪しながらジッと見つめていると
隣に座っていた上原刑事が、私の肩に手を置いた。
「大丈夫ですよ、この人は敢ちゃんと一緒で
そう簡単には死なないから。」
『え…、敢ちゃんって…?』
「あ、大和警部のことです。
私達、小さい時から3人共知り合いで、幼馴染なの」
『そうだったんですか…』
幼馴染の3人が揃って刑事になるなんて…
余程仲が良くなければそうはならないだろう。
「まぁ、敢ちゃんと諸伏警部は
私より6歳も年上なんだけどね?」
『へぇー…、でも、大和警部だけは
ただの幼馴染ってわけではなさそうですね?』
「え…!?ど、どうして…」
…いやいや、どうしてって聞かれても。
それは、少し考えれば誰にでも分かるでしょ。