第74章 残像
歩きながら頭の中に思い浮かぶのは
被害者、舟久保 真希さんのこと…。
父親の舟久保さんが言うように
本当に彼女に婚約者がいたんだとしたら…
きっとその人は、相当苦しんでいるに違いない。
もしかしたら、強盗犯の2人を恨んでいる可能性もある。
黙ったまま事件の事を考えていると
そんな私を見た美和子ちゃんから声を掛けられた。
美「美緒先輩、すごく険しい顔してますけど
どうかしたんですか?」
『うん…、真希さんのお墓に
誰が花を供えたのかなーって思って…」
美「…っていうか、どうして先輩が
事件のこと知ってるんですか?」
…あ、しまった。
美和子ちゃんと高木くん、毛利さんには
子供達と天体観測に来たとしか言ってなかったっけ。
『えっと…、コナンくんにね、少し聞いたの。
諸伏警部達とも以前会ったことがあるから…、
なんか気になっちゃって。』
美「そうだったんですね…、
じゃあ何か分かったことがあれば
すぐに教えて下さいね!!」
『うん、分かってる。』
納得してくれた美和子ちゃんを見ていると
彼女の少し先を歩いているコナンくんが
苦笑いを溢しているのが見えたが
特に突っ込むことはせず、
少しずつ霧が晴れ、日が差し込み始めている樹林の中を進んでいった。
そんな時…
『っ…!!この感覚は…』
間違いない…
この山の中に…、殺気を持った人がいる…。
胸の奥がザワついて
上手く言葉で説明できないけど、嫌な感じが漂っていて…
無意識に足を止めた私は、辺りを見回した。
コ「美緒さん?どうしたの?」
『…。いる…犯人がきっと…この近くに…』
コ「え…?」
『大和警部達が……、危ない…!』
コ「!!美緒さん!?どこ行くの!?」
私はコナンくんには何も答えず
歩いてきた道を走って戻り出した。
美和子ちゃん、高木くん、毛利さんの引き止める声も聞こえたけど、私はただ自分の嫌な勘を信じて走った。