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《降谷夢》bonheur {R15}

第73章 隻眼




『犯人がどこまで掴んでるか分からないけど…
次に狙われるとしたら、大和警部だよね…』



大和警部はきっと雪崩に遭ったことで、
その犯人の顔までは見えなかったか…、もしくは覚えていないか…。


どっちにしろ、彼に危険が迫っているのは事実。



最悪の場合、大和警部の周りの人達にも危害が及ぶ可能性もある。






…もちろん、そんな脅威は
絶対私が阻止してやるつもりだけどね。





でも……気にかかることが一つあった。







求刑を軽くする為の司法取引…



なんだかそれが、私がSPだった頃の上司…
前田さんが亡くなった時に、犯人が釈放された時の状況と、少し似ている。



…まぁ、あの時は司法取引ではなく
お偉い政治家の圧力によるものだったんだけど。




ただ、罪を犯したのに、償いをしなかった…、という点が似ていることから
私の頭の中に、あの時の忌々しい光景が過ぎった。







『…。零、くん…』






どうしよう…


何だか無性に零くんの声が聞きたい…。




昔のことを思い出すと、弱い自分が出てきて…

私のせいで亡くなった前田さんに申し訳なくて
至らなかった自分に後悔をする…。



…こういう不安定な気持ちになることは
これまでにも何度かあった。



でも、そんな時はいつも零くんが励ましてくれた…。


辛くて、苦しいなって思った時は
優しく慰めてくれた…。



何年経っても、あの事件は忘れることが出来ず
立ち直ったと言っても、思い出す度に胸が苦しくなる。





『電話…してみようかな……、あ。』





しまった…。

今日は月曜日だから
零くんはいつもこの時間、ポアロの仕事中だった…。




私の弱さをいつも受け入れてくれるから
結婚してからも、零くんに甘えちゃう癖がついてるな…。


…公安の協力者としての仕事を全うするには
こんな気持ちのままじゃだめだ。





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