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《降谷夢》bonheur {R15}

第73章 隻眼




二通目の最初に書かれていたのは
その傷害事件での被害者…舟久保真希さんのこと。


彼女は銃砲店の店員で、深夜にも関わらず
店に戻ってきたところ、強盗犯の2人と鉢合わせ、防犯警報のアラームボタンを鳴らそうと体を屈ませた際
道具箱から落ちてきた刃物で足を負傷…。



命に別状は無かったが
彼女はバイアスロンのオリンピック強化選手の1人で、その怪我が原因で、代表候補から外され……
その後、死亡が確認されている。

現場では遺書が発見され、自殺として処理された。





『この人……相当辛かったんだろうな…』





でも自殺は、自分自身を殺すこと…。



例えどんなに辛くても
挫折から立ち直って、生きていて欲しかったな…。





死者が出ていた事で暗い気持ちになった私は
さらに下の方へとスマホの画面をスクロールした。






『極秘…、被疑者、鷲頭 隆について…。』





彼は御厨と同様、銃砲店へ強盗に入った1人…。


しかし、当時鷲頭は、
巡回中だった1人の巡査により当日のうちに逮捕。

その翌日、鷲頭の供述で、山に潜伏していた御厨を逮捕。



鷲頭 隆は、検察と司法取引を実施し
元々は懲役3年だったが、執行猶予となった。


事件の早期解決を望んだ検察は、
先に逮捕した鷲頭と司法取引をし、共犯者である御厨について、知っていることを全て供述すれば
求刑を軽くしてもらうことを引き換えに、鷲頭はその条件を飲んだ。





『はぁ…、司法取引は仕方のない事だと思うけど
事件後に死者まで出たのに……』




御厨が懲役3年、鷲頭が執行猶予…


こんな裁判の結果に
舟久保さんの遺族達は納得したのだろうか…。


…そう考えると、私はやるせない気持ちになった。






そして、全ての資料を読み終えて分かったことは

10ヶ月前…雪崩に遭った大和警部は、
御厨を追いかけている途中、鮫谷警部を殺害し、日本政府を脅迫した犯人を見たんだろう。



資料には、御厨ではない何者かに
銃を発砲された、とも書かれてたから…


きっと大和警部は、その銃弾を受けて
左目に傷が残り、隻眼になってしまったんだ。





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