第17章 東京*
「それで‥黒尾くん達と何かあったのか?」
『‥えっ?!』
移りゆく景色をぼーっと新幹線の窓から眺めているとおにいちゃんがビール缶を片手に優しく微笑む
「なんか‥恋してるって顔してるけど?」
『えっ?!恋っ?!どんな顔してたんだろっ‥』
窓に映る自分の顔
確かに少し緩んでいたかもしれない
「昔っから、誰でもかれでも人として大好きになるからさ〜いつ恋を覚えるのか心配してたけど‥もう高校生だもんな〜嬉しいような寂しいような」
最近みんなが好きって言ってくれて
ドキドキと感じる胸の鼓動
でも
恋っていうのは今はまだよく分からない
だって
みんなの事が本当に大好きだから
「兄ちゃん的には大地を応援してるけどな〜いや、でも影山くんもなかなか‥‥でも黒尾くんもしっかりしてそうで良かったし‥研磨くんはあぁ見えて意外と独占欲強そうだな〜」
無事に仕事が終わった開放感からかビールを飲むスピードが上がって
顔を赤く染めて饒舌に話し出す
『でも‥まだ全然分からないよ‥』
「そのうち分かってくるさ、焦らなくてもいい」
『ほんと‥?』
「まぁ、花澄が幸せならそれでいいから‥兄ちゃんは誰でも応援してるぞ」
ぽんぽんと優しく頭を撫でたかと思うと
今度はうるりと瞳に涙を溜める
「でもやっぱり俺の可愛い妹を他の男にやりたくない〜‥」
『ええっ?ちょっと飲み過ぎじゃない?大丈夫‥?』
ギュッと強く抱きしめられるとそのまますやすやと眠り始めてしまった
そっと腕の中から抜け出して携帯を開くと今日の楽しかった夢の国で撮った写真
3人でお揃いのカチューシャをつけて
とっても嬉しそうな私の顔
その横で同じくらいの嬉しそうな黒尾さんの顔を見てさっきまでの熱が蘇ってドキッとする
このドキドキがどんな気持ちなのか
大地や
影山くん
菅原さんや月島くん
みんな大好きだけど
それとはまた違う
いつかは答えを出さなきゃいけないのは分かってるけれど
考え始めると頭の中も心の中もぜんぜんわからなくって目を閉じる
こうして気付けばあっという間に仙台について
東京での楽しかった一日が終わり
また新しい日常が始まる